TAKAHIRO TANI SPECIAL INTERVIEW

「なぜ集めるのか?そこにミニカーがあるから。」

35年以上のキャリアを持つ、日本屈指のホットウィール・コレクターの谷 隆弘(タニ タカヒロ)氏 。パッケージから出し造形を愛でる「ルース派」の美学を貫き、プロダクトの意匠やロゴに宿る魅力を深く探究している 。大阪の愛好家仲間と「レッドラインクラブ」と称する密なコミュニティを築き、情報の共有やトレードを通じて交流を深めることを活動の糧としている 。「そこに物があるから」という至極単純かつ深い哲学に基づき、今もなお飽くなき情熱でミニカーの世界を深掘りし続けている 。


35年を捧げたHot Wheelsコレクター、谷氏の壮絶な収集哲学

「なぜ集めるのか?そこに山があるから。」
登山家ジョージ・マロリーの言葉を借りるなら、谷氏にとっての「山」は、他でもないHot Wheelsだった。
35年間、この小さなダイキャストカーに人生を捧げてきた日本有数のコレクター、谷氏。彼の自宅に一歩足を踏み入れると、そこはミニカーと、それをめぐる熱狂的なストーリーが渦巻く、壮大な迷宮だ。
「なぜかわからないんです。正直なところ。でも、気づいたら沼にはまってしまうんです。」
今回、谷氏が語るのは、ミニカーに魅了され、その「熱」に突き動かされてきた、彼自身の壮絶な収集の物語だ。

狂気のミニカー道

昔、ホットウィールっていうミニカー自体、コブラとコルベットくらいしか知らなかった。ドラッグとかインパラ?そんな言葉も知らんかったですね。最初はトミカのスーパーカー世代。カウンタックとかストラトスとか、そういうのから入って。

でも、26歳くらいの時に、なんか急にカー雑誌でミニカー屋を見つけて買い始めたんです。トミカは子どもの頃から大事に持ってたけど、ホットウィールにハマったのは26歳からですね。

96年にトイザらス1号店が奈良にできたんですよ(奈良県橿原店が西日本1号店)。オープン当日に買いに行って、コブラとコルベットしか知らんから、そのコブラと赤いコルベットをゲットしたんです。


営業先からのおもちゃ屋巡り

そこから、なんやかんやでドップリですよ。仕事がコンタクト関係で名古屋に10年間。石川まで車で営業に行って、帰りは必ず電話帳で調べたおもちゃ屋を巡り回るんです。

頭おかしい、アホですよね(笑)。35年前、26の時ですよ。電話帳で調べて、全部のおもちゃ屋を回りまくるっていうね。その頃はまだ、岐阜のアンデルセンとかハローマックとか、いっぱい店があったんですよ。大阪と京都を中心に兵庫まで、それから名古屋時代に愛知、岐阜と三重は、ほぼ仕事で行きましたね。仕事が無くても行ってます(笑)。


ドラバス

中でも、俺を狂わせたポイントはやっぱり*ドラッグバスですね。

95年に画像が出て、96年に発売されたんですけど、これレギュラーで500円で売ってたんですけど、俺はその時買えてないんですよ。ファーストエディションは全然探しても見つからなくて。青とかゴールドのバスが3万円くらいしてました。バスは思い入れが強いですね。

あと、ホットウィールはデザイナーの存在もでかい。ドラッグバスを作った*フィル・リールマンとか、*ラリー・ウッドとか。ミニカーをデザインした人がファンになるっていうのが魅力ですよね。

*ドラッグバス
フォルクスワーゲン(VW)のタイプ2(通称ワーゲンバスやT1)をベースに、アメリカのドラッグレース仕様にカスタムされた、ホットウィールを代表する人気のオリジナルキャストの一つ。

*フィル・リールマン
ホットウィールのベテランデザイナーで彼が初めて単独でデザインしたキャスト(金型)の一つが、1996年に登場したVWドラッグバス。これは彼の出世作であり、現在も非常に人気が高く、多くのバリエーションがリリースされ続けている。

*ラリー・ウッド
「Mr. Hot Wheels」と呼ばれ、半世紀にわたり700台以上のミニカーのデザインに携わったと言われている。他社のミニカーが実車のスケールモデルに注力する中、彼はホットロッドやカスタムカーといったアメリカの自動車文化に根差した、独創的で幻想的なデザインを数多く生み出し、ホットウィールを競合他社から際立たせることに大きく貢献した。鉛筆での手書きのデザインにこだわり続けた「オールドスクール」なデザイナーとしても知られている。



プロトタイプの衝撃

もうひとつ、外せないのが、あの「謎チュウ」時代。

2000年ちょっと前くらいかな。都内のレンタルケースに、見たことのないホットウィール、プロトタイプみたいなものが並び始めたんです。それは「謎の外国人?」が持ってきてたんですよ。みんな訳も分からず「謎チュウやろう」って呼んでて(笑)。

当時、工場から出るB品なのか、グレーなマーケットからなのか出所は不明なんだけど、*プロトっぽいバスとか、*パッションとか、すごいのが出回りましたね。俺も4台くらいは持ってます。


*プロト
デザイナーがコンピューター上でモデルを作成した後、かつてはレジンやクレイ、近年では3Dプリンターで出力された後、数段階の工程を経て作成される試供品。最終的なダイキャスト(金属)モデルとは異なる色、タンポが入っていない等の特徴も持ち、細部の確認や修正に使われる。
開発プロセスの一環としてごく少数しか製造されないため、現存数が極端に少なく、そのモデルが生まれるまでの「過程」を知ることができる究極のコレクターズアイテム。

*パッション
1990年に伝説的デザイナー、ラリー・ウッド氏によって生み出された、ホットウィール史上最も重要なモデルのひとつ。1949年型マーキュリーをベースに、車高を極限まで下げる「レッド・スレッド」スタイルを完璧に再現している。 それまで「子供の玩具」と見なされていたミニカーに、大人のコレクターが熱狂し、買い占め騒動が起きるほどの社会現象を巻き起こした。1995年の初代トレジャーハントにも選出されるなど、現代まで続く「プレミアム・コレクター文化」の原点にして頂点と称されるモデル。


「ロゴマニア」の流儀

今、全部でだいたい5000台くらいかな。コレクションは基本的に開けてます。*ルース派なんで。

俺、多分ロゴマニアなんですよ。何と言ってもロゴ。マテルのロゴですよね。トラックの横に書いてるロゴだけでも好きなんです。ケースのタグでさえ魅力がある。

あと、俺はタイヤマニアでもあります。ゴムタイヤが溶けないんですよ、ホットウィールは。35年経ってもなんともない。プラタイヤには興味ないんです。昔はゴムタイヤ付いてるだけでトレジャーでしたからね。ちゃんとブリジストンとかダンロップのライセンス取ってるところもたまらんのですよ。

*ルース派
ミニカーをパッケージ(ブリスターパックやカード台紙)から取り出して(ルースにして)収集するコレクター。


レッドラインクラブ

俺の熱を支えているのは、やっぱりコレクター仲間との濃密な交流ですね。

大阪の仲間とは毎月サイドラインミーティングしてますよ。7人くらいで集まって、酒やお茶を飲みながらミニカーの話を4時間くらい。この集まり、俺は「レッドラインクラブ」って呼んでます。

仲間とはトレードもします。見つけたらとりあえず買うといてもろて、後で精算したり。「これ誰々さんが欲しがるかな」って思ったら、電話せんでも買うときますね。そうやって増えることもあるんです。アメリカに行く知り合いやショップに頼むこともありますしね。

年に一度は仲間うちでダウンヒルレースやったり。トイザらスで出会った人でも、みんな一緒に集まります。大阪は誰でもOKっていうカルチャーがあるから。


そこに物があるから

命かけて集めてきたんですよ、35年。でも、結局なくなったら、息子とかお袋には価値なくなるじゃないですか。妹が「こんなん8万も出して!」って思うでしょうし。だから、分かる人に声をかけとかんと、俺が亡くなった時のことをね。

哲学なんてないですよ。ただ単に「集めるのが好き」なんですよね。山登るのと一緒で、「なんで集めてるの?何個買うの?」って聞かれても、分かれへんから。

「そこに物があるから。」それだけですわ。

30年前に行く機会があったんですけど、結局行けてないんですよ、アメリカ。今年行けるかなと思ったら、また手術で無理になったし。行けるときに、ね。

まあ、こんなしょうもない話ですけど、OKですか?(笑)


【Hot Wheels Collectors Japan Convention 2026】

開催日時:2026年5月24日(日)
DATE:May 24,2026

開催場所:幕張メッセ(千葉)展示ホール5・6
Location:Makuhari Messe [International Exhibition Hall 5・6]

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