JESSE (RIZE/The BONEZ) SPECIAL INTERVIEW
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人生を魂でひた走るJESSE。40代で叶えた夢、自分と同い年の相棒「80エル·カミーノ」(80’Chevrolet El Camino)を手に入れるまでのストーリーは、1台のホットウィールから始まった。こんな夢の叶え方がある、それがJESSEのスタイルだ。
【JESSEプロフィール】1980 年 8 月 11 日 東京都出身。RIZE / The BONEZ のフロントマン。 1997 年に金子ノブアキと RIZE を結成。アメリカンスクールで 育ったバイリンガル。全身のタトゥーは 強いメッセージや その歴史がアートとして刻まれており、”JESSE”としての生き様を体現している。歌詞に込められたメッセージをストレートかつソウルフルに聴かせるとともに、全身で表現する熱量溢れるパフォーマンスは一瞬にしてオー ディエンスの心を引き込む。地元戸越をこよなく愛し、兄貴肌で義理人情に厚い人柄は音楽業界のみならず多くの人に慕われている。そのカリスマ性とファッションセンスは各界からの評価も高くファンも多い。長年に渡り様々なブランドのモデルにも抜擢されている。自身アパレルプリント工場“JSF”のオーナーを務めるだけに止まらず、近年では古着を取り扱う「GBB」を展開するなど、マルチクリエイターとして活躍し続けている。
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●69’シボレー·エルカミーノ
自分の母方の曾祖父ちゃんは、69年の真っ黒なエル・カミーノ(Chevrolet El Camino、以下:エルカミ)に乗ってたんです。毎日、バーってガレージを開けて、キツくなってるボルト全部を緩くして、油差して、またキツくすることをやる人だったんですよね。
歯が一本もなくて何言ってるか分からなくて、いつも自分はガレージにポツンと座ってることしかできなくて、最初はつまんねなって思ってたんです。だけど毎日一緒にいて、スパナなんかの工具を渡してるうちに、それがかっこよく見えてきたんです。自分もこのエルカミが欲しいって思うようになっていったことを、はっきりと覚えています。その日から、いつか手にいれるエルカミが自分の夢のひとつになったんです。
まだ小学校にも入ってない6歳くらいの時だったと思います。じいちゃんに連れていかれたKマートのオモチャセクションにホットウィールがガーッと並んでて。Mcfaddin家は、全員シボレーなんですけど、それでじいちゃんの車と同じ真っ白のシボレーを買ってもらいました。それから数日過ぎたある日、じいちゃんがいきなり青いペンキを持ってきて「ペンキ塗るぞ!」って車を青に塗り始めたんです。だから自分も買ってもらったホットウィールを、その青いペンキで塗りました(笑)。それが自分の初めてのホットウィールとの出会いですね。
父方の竹中家は、じいちゃんが日産の整備士だったから全員NISSANで(笑)。昔の人は、自分が所属している会社を、自分の会社と同じくらいREPするし、生涯それしか乗らないみたいな感じがあった気がするんですよね。
●アメリカン·カルチャーとドリーム
80年代が自分たちのプライムタイムです。例えば『E.T.』の登場人物がネルシャツを着たり、ジーパンを履いていたり、そいつらがBMX乗っていたり、『Back to the Future』の*ビフ・タネンが55年のフォードに乗っていたり、『トレーニング・デイ』でデンゼル・ワシントンが乗ってるモンテカルロだったりとか、映画が常にカルチャーの起点にあったし、映画で流れる音楽を含めて全部がリンクしていました。だから自分がこのカルチャーにはまったのは映画のおかげと言えると思います。
自分はJSFやGBBで古着屋もやっているけど、90年代のアメリカンカルチャーの熱がいまだに冷めないですね。自分が16歳の頃、お金がなくて何となく見様見真似で、似たようなものを買って集めたり、背伸びする中で、お金がなかったらこそ、頑張ってた気がします。やっぱりゴールを作って理由を作るとそれに近づけるんだと思うんです。
*ビフ・タネン
映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に出てくる不良。狡猾で悪知恵が働くキャラクターだが、PART2では主人公以上に存在感を発揮し、各年代でデラックス・フォード、シトロエン・DS、BMW633CSiベースの改造オープンカーなどに乗りクールな一面を持っている。
●夢を取り戻す旅
5年前に生まれた戸越に土地を買って、曾祖父ちゃんと一緒の69年のエルカミを買って、頭金を払った次の日に不祥事を起こしちゃって、本当に全部を失いました。自分のこの5年間は、その時に失ったものを取り返す旅だったけど、またエルカミをゲットするまでになれたなって。だから夢で終わらせるのは勿体ないと思うんですよ。自分も実体験として夢は叶うものだと再確認できたから。
最初は箱もついてないボロボロの80年のエルカミをホットウィールで買って、エルカミの年代もののポスターを全部集めて、部屋中に貼って、毎朝起きて自分の部屋行くときに、そのエルカミを眺めて、そこから80年のエルカミの別色とか、そういうのも全部買って集めて壁中に貼っていきました。
自分の周りを、もうエルカミだらけにすることから始めたんです。そうやって夢を近づけて、自分と同い年のエルカミに辿り着いたっていうストーリーを今の大人たちにシェアすることで、あきらめないで、夢を叶えるきっかけになって欲しいと思っています。
●80’シボレー·エルカミーノ
車屋「JESSE君、エルカミ一個カリフォルニアから入りそうだよ!けど79年だと思うんだよなぁ」
JESSE「79かぁ…。やっぱ俺と同じ生まれ年の80が欲しいなぁ…。でも見に行くよ!」
現地に行ってドアを開けると年号が書いてあるプレートが削れて読めくなっていたんです。フロントを見ると角目一灯で。78から82年製に作られたことが分かりました。まだ確信はなかったけど、刺さってる鍵に付いてる年号とライセンスナンバーをパっと見たら1980って書いてあった…「やべぇ80だ!!!」もう速攻で買いました(笑)。
JESSE「俺、ちょっとエルカミ買おうと思うんだけどさ…、」
嫁「うち4人家族よ。3人しか乗れないけどどうすんの」
JESSE「だよねっ…。でも2台目として買うから!!」
自分が一回失敗して這い上がって、自分のご褒美として何かをするのって初めてのことなんです。世の中って一回失敗するとゲームオーバーみたいな風習があるけど、失敗しないと成功には近づけないはずで、いっぱい失敗するべきなのに、なぜか失敗すると社会復帰することが難しい、社会貢献するのが難しいんです。
失敗する奴は、人のために何かしたいなって思う人と、何で自分が捕まらなきゃいけなかったんだよ!っていう人と二種類に別れると思います。大部分の人はひと回り人間として成長すると思うんですよね。自分が迷惑をかけた人、心配をかけた人が毎日、自分の頭をよぎるから、心配をかけた分どうやって返せば良いかを思うはずだし。だけどそのチャンスを与えてくれないのが、特に日本だと思います。だから自分で掴み取るしかないんですよね。
●オモチャから辿り着くストーリー
自分ら40代は、もっとかっこつけていいと思うんです。セカンドカーを持つことは夢だと思ってたけれど、叶えていいんだなって。「JESSE見てたらいけそうだな!」とかさ(笑)。多くのファンがDMをくれる中「僕もカトラス(Oldsmobile Cutlass)買いました!」とか、「インパラ(Chevrolet IMPALA)の72買いました!」とか、「JESSEさんのおかげです」っていう連絡が来ると素直に嬉しいんです。本当はそういう車が欲しけど、もう到底無理かなと思っている人たち、まずホットウィールを買ってみることから始めたら!ってすごく思います。
たかがホットウィールかもしれない、だけどそれを見ているうちに、実際の車まで辿り着いたんだぜ!っていうことを、みんなに感じて欲しいんです。それで、自分は今3台目の車が欲しくなっちゃってる(笑)。その小さいオモチャの車から本当の車まで行った自分のストーリーは、今の40代のパパさんママさんをはじめ、夢を叶えたいと思ってる人たちに、JESSE流のそんな夢の叶え方もあるんだということを広めたいと思っています。
●ハートが踊る
自分がライブハウスにエルカミに乗っていくのには、わけがあります。例えばファンが「JESSEさんに憧れて!」とか、「JESSEさんみたいになりたいんです!」って憧れてくれます。それは最新の高級車に乗るんじゃなくて、傷だらけだけど自分と同じ年の80年のエルカミに乗るっていうスタイルまで、ここまでスタイルをキープするJESSEに憧れてくれたら最高だなって。
全て便利からかけ離れたものだけど、毎回乗る度に、ドアを開ける度、締める度、エンジンかける度、ハンドル回す度、ハートが踊るんです。こいつのお陰で贅沢な時間が本当に増えました。ライトが点かなくても配線を触れば治せるし、けどコンピューター制御の車だったら自分では治せないんです。
たまに戸越から六本木の高速代を払って、好きな音を爆音でかけて、窓開けて、高速を信号なしで仕事場に向かうっていうことが、自分にとっての贅沢な時間なんです。人によって、それは無駄に見えるかもしれないけど、自分にとっては贅沢な時間なんですよね。
古い車って手間がかかるけど、こういう時代だからこそ贅沢な時間が増える気がします。そういう細かいところを知るきっかけをくれたのもホットウィールのおかげで。本当に毎日、エルカミのホットウィールとライターを一緒にポケットに入れてました。傷ついてボロボロだけど愛おしいんですよね。自分も怪我だらけだけど、そんなところも自分と一緒で好きなんです。自分にとって、車とギターって似てると思ってて。テレキャスも1980年だし(笑)、自分はそうやって夢を叶えてきました。
●NEVER CHANGE
40代になった今が第2期20代だと思っています。この間、自分の母親に見せられた18の自分の写真、全く同じ格好してた(笑)ディッキーズを履いて、トラッカーズキャップをかぶって、フランネルのシャツを着て「JESSE変わらないね」ってMomに言われたけど、自分が子供の頃に憧れたものが、子供っぽかったんじゃなくて、ちょっとだけ自分が背伸びをしていたんです、きっと。でも間違ってなかった、変わってなかった、と感じれてそれが自分自身一番嬉しいんです。
だから今の40代の人たち、20代で遠回りしたところを遠回りせず、本当に好きなものを好きだって言っていい時期なんだぜ!っていう代表だと自分の事を思っています。だからこの記事を読んでくれてる人たち「自分なんてもう遅いよ…」じゃなくてようやく時期が来たんだぜ!っていうことを分かって欲しいんですよね。ここまで待ったからこそ、大人になったからこそ、ようやくやれることいっぱいあるんだぜってことなんです。
みんな自分の趣味は、家族と嫁と分けて考えることはやめて、家族と行けばいいじゃん!家族と乗りゃあいいじゃん!他の家族と家族ぐるみでツーリングすりゃいいじゃん!車の話すりゃいいじゃん!男は男だけでとか、女は女だけでとか、子供は子供だけでって、たまにはあっていい、だけど家族ぐるみで馬鹿できるのが大人の特権だからさ、その全てがこの1台のホットウィールから始まったっていう話ですね!【了】
【アパレルプリント工場“Jesse’s Shop & Factory”】
Open 12:00 ~ 20:00 Close
TEL:03-6451-3788
Mail:JSF@jshop-a.com
※定休日 : 水曜日
戸越2-1-21, Shinagawa-ku, Tokyo, Japan 1420041
https://www.instagram.com/jessesshop1054